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2006年8月31日 (木)

構音(発音)の訓練

「言語聴覚士って、どんな仕事しているんですか?」と職業について話をすると必ずと言っていいほど聞かれます。だから言語聴覚士の仕事について知ってもらうためにもブログでも少しずつ仕事の内容などを書いてみようかと考えています。ただし、言語聴覚士の仕事というのはとても幅が広いため、あくまでも私の場合ということで読んで下さい。

言語聴覚士の仕事の中に「構音訓練」というものがあります。構音とは医学的な専門用語で、一般的に言われる発音のこと。ではなぜ発音と言わないかと聞かれると私もよく分からないのですが、口腔の操作についてより意識したものを指すため、という話を以前聞いたことがあります。

構音訓練を行う場合、成人は主に脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)による麻痺によるもの(運動性構音障害)や交通事故などによる頭部外傷や顔面骨折、ガンの手術による後遺症が(器質性構音障害)といったケースが主です。たまに小児の場合に述べる機能性構音障害のケースもあるらしいのですが、私自身は訓練対象としてお会いしたことはありません(テレビや街などで「あれ?」と思う方はいらっしゃるのですが…)。

一方小児の場合は口唇口蓋裂(唇や上顎が生まれつき裂けている)などの器質構音障害や脳性麻痺などによる運動障害性構音障害というケースもありますが、多いのは機能性構音障害です。これは医学的には問題がないのに、幼少の頃より発現する発音異常、発音障害です。原因はよく分かりませんが、正しい音を出そうと本人が無意識のうちに試行錯誤しているうちに誤学習してしまうケースが多いようです。特定の音だけ出ることがほとんどで、たいていの場合は「かわいらしい話し方ね」「ちょっと舌足らず」と言われることがあっても見過ごされていることが多いと思います。

自然治癒するケースがほとんどなのですが、就学1年前になっても構音が不明瞭な場合は訓練の対象になります。お子さんについて気になる場合、一度保健センターやことばの教室などで相談されることをお勧めします。5歳未満だと訓練する場所が口の中、という見えない場所だけに難しいし、集中力を要するため飽きてしまうことが多いからです。またこの位の年齢になると文字も用いた指導も可能になり、本人も「自分がうまく言えていない」ということが分かってくるため訓練に対してモチベーションがつけやすいということもあります。

私の場合、4歳以下で相談があった場合は評価をして他の発達面の問題がないか確認し、状況に応じて食事指導をしたり(しっかり噛む、丸呑みさせない等)、シャボン玉や笛など、口腔を用いた遊びを行うようアドバイスします。また訓練の準備として数ヶ月に一度会う、といった対応をすることもあります。口腔の運動というのは数ミリ単位の協調運動であるため、身体を動かすことが苦手な子どもの場合は日常生活でしっかり身体を動かす(特にバランスを要する運動)、身辺自立の課題(食事、更衣、排泄など)を丁寧に行うといった指導を行うこともあります。

機能性構音障害の場合、専門家による指導を受ければ小学校高学年までなら完治すると言われています。期間も機能性構音障害だけのケースだと大体半年~1年前後でかなり改善してきます。成人でも指導を受ければ完治するケースも多いそうですが、中には日常会話まで般化しないこともあるようです。構音というのは一種の運動ですからやはり他の運動と同様、小さいうちから行う方がスムーズに行くものなのでしょうね。

ただしここで注意を要するのが機能性構音障害に発達障害を伴っているケースです。注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)がある場合、構音の訓練に対して集中することが困難だったり、文字から音をイメージすることが困難なことがあります(これは音韻の障害もあるため、他の評価も必要になります)。また協調運動に障害があるケースも多いため、適切な位置に舌や口腔を動かせないことがよく見られます。以前小児の構音を主にしていた言語聴覚士と話をしていた時「どうもなかなかよくならないなぁ、と思っていたケースって今考えると発達障害だったかも」という話題になったことがありました。また、吃音(いわゆるどもり)を伴っている場合も吃症状の状態を見ながら訓練を進めていきます。

これを読んで「あれ?かすれ声とか声帯の問題は訓練の対象じゃないの?」と思われた方もいるでしょうが、実は専門的にはこちらは「音声障害」という別なジャンルなのです(もちろん重なっているケースもありますが)。こちらの方はまた別な機会に書くことにします。

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コメント

はじめまして。
介護職として働いています。

現在、勤務先で『口腔機能について』関連の資料作りにおわれています。

私の仕事場では、昼食前の体操として、発声練習を中に組み込んでいます。

その『発声訓練』について、調べていたところ、幾つか疑問が浮かび上がってきました。

◎『構音訓練』と『嚥下訓練』の効果の違いは、何だろう?
    ↓
・どちらの効果が好ましいのか?
・・・と思い悩んでいます。

投稿: 梨と梅 | 2009年9月10日 (木) 13時23分

梨と梅さん、コメントをありがとうございます。

資料作りお疲れ様です。ご質問の件ですが、まずしゃべるところを話すところは一緒、ということを私たちは意外に忘れがちです。

つまり構音と嚥下というのは想像以上にリンクしているものなのです。

嚥下訓練の中には直接訓練と間接訓練に分かれます。直接訓練は食物を使い、食事動作や嚥下動作の改善を目的にしますが、間接訓練は嚥下に用いる筋肉を鍛えることを目的とします。

嚥下障害の方の中には構音障害を併発している人も少なくありません。

逆に小児のケースで構音について相談されたときに食事について確認すると、多くの場合咀嚼や嚥下の改善ポイントが出てくることもあります。

もちろん症状によって優先順位やターゲットになる動作や筋肉は違います。それを細かく評価・指導していくのが言語聴覚士だと思っていただけると嬉しいです。

投稿: coachmurakami | 2009年9月12日 (土) 12時22分

もうすぐ3歳になる娘がいる母です。
その子供の発音の事で気になる部分があり、このサイトを見ました。
言葉を発することは早く、特に気になることはなかったのですが、カ行の発音がすべてタ行になります。
『かわいい』=『たわいい』になります。
『おんなのこ』=『おんなのと』に・・・。
聴覚障害?かと思い、
『たわいい』と話す娘に『たわいい?』と聞くと違うと答え『かわいい?』と聞くと『そう』と答えるので、聴覚ではなく構音障害?と感じるようになりました。保育園の先生に相談しても、まだ発音がうまく出来ない子も沢山居てるし、気にはならないよ。と言われたのですが、まだまだ様子を見ていいのでしょうか?
小児科医に相談したところ、舌小帯に異常は見られないとのこと。
次回の予防歯科時に小児歯科医に相談予定です。上唇小帯が少し下の位置にあり、それが原因なのか?と歯科医に聞きましたが、
上唇小帯は関係がないだろうと返答がありました。
何かアドバイスをいただけたら、幸いです。
宜しくお願い致します。

投稿: hayatotihiro | 2009年9月18日 (金) 23時16分

年齢を考えると、本格的な構音(発音)の訓練はまだ難しいと思います。

私の場合、一通り発音の状態を確認した後食事や遊びの中で気をつけられそうなことをアドバイスします。

ただ実際にお会いしないと分からないことも多いので、できたらお住まいの地区の保健センターなどに言語聴覚士の「ことばの相談」事業がないか問い合わせてみるといいでしょう。

食事でのチェックポイントはあまり噛まずに丸のみをしていないか、食べ物を左右の歯で噛めるよう舌を動かしているかといったことなどが挙げられます。

遊びではシャボン玉などをする、にらめっこなどで色々な表情を作ってみるといったことも有効です。

その中で気付いたことがあったら言語聴覚士や歯科医に相談してみてください。

投稿: coachmurakami | 2009年9月22日 (火) 21時58分

介護デイサービスで機能訓練員(按摩マッサージ師)をしております。

最近、昼休み前に利用者様相手に発声練習を始めたばかりです。市販の書籍の見よう見まねでパタカラなどやってますが、今ひとつ自信が持てません。

訓練の中で『これだけは欠かせない』というものがあれば教えて戴きたいのですが。

投稿: くま | 2009年12月 5日 (土) 21時52分

コメントをありがとうございます。

対象の方がどんな方で、何を目的に発声練習をされているかでずいぶんポイントが変わるかと思います。

かすれ声などがある方ですと声帯の閉鎖不全や疾患もありますから、医師に診察してもらう必要があることもあります。

ですのでご質問の答えは「人によって違うので一概には言えない」しかお答えようがありません。

また、くまさんご自身が訓練の目的を理解し、本に書いてある動作の意味を分かっていただくのが一番大切かと私は感じました。

一度拙緒「声と話し方のトレーニング」を読んでいただけると嬉しいです。

投稿: coachmurakami | 2009年12月 7日 (月) 01時34分

67歳の男性です。
7年前にパーキンソン症との診断を受け、3年前に同じ病院で多系統萎縮症との診断を受けて
基本的な薬は変更なしで現在に至っています。
歩行障害、視覚障害、構音障害が主な症状です。
特にここ2~3年、構音障害の症状が進んで
自分ではしっかり話している積りが相手に殆ど
伝わっていなく焦って言い直すと強烈にどもる事が多く、みんなが笑うので(誰か一人でも
聞いてくれる人がいれば何度でもトライするが
そうでないと)発言を中断します。
しかし、カラオケでは全く問題なく歌うことができるし本読等でも上手に読むことができます。
このまま会話が全くダメになるのは恐ろしい事です。 何とか韻律があると略ゞ、正常である事をよすがに会話が復旧する手段はないものか? というのが希望ですが何かお気づきの
点等ご助言頂きたく、長々と駄文を書き連ねました。

投稿: ダーティオールドボーイ | 2012年7月17日 (火) 22時49分

初めまして。コメントをありがとうございます。

カラオケなどでの発声が可能とのことだとすると会話など内容を考えながら話す時が難しいということでしょうか。

一度言語の状況全般の検査を受けてみるといいと思いました。

言語聴覚士協会のサイトで検索するとお住まいの近くで言語聴覚士がいる病院や施設を探せます。

http://www.jaslht.or.jp/st_app/

参考になれば幸いです。

投稿: coachmurakami | 2012年7月18日 (水) 16時43分

機能性構音障害に興味があります。
置換、省略、歪み な誤りがありますが、省略の場合どういった訓練が有効か、教えてください。

投稿: ゆっこ | 2012年11月13日 (火) 18時17分

コメントありがとうございます。

ご相談の件ですが、実際に音声を聞かないとなんとも言えないです。

お子さんの発音の場合、よくわからないまま教えようとするとかえって癖を助長することがありますので、できたらお住まいの地区の保健センターなどに言語聴覚士の「ことばの相談」事業がないか問い合わせてみるといいでしょう。

また、言語聴覚士協会のサイトで検索するとお住まいの近くで言語聴覚士がいる病院や施設を探せます。

http://www.jaslht.or.jp/st_app/

投稿: coachmurakami | 2012年11月23日 (金) 19時30分

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